更新日:2011年02月21日 掲載日:2006年10月19日
治療法の選択
悪性リンパ腫の治療法を選択するうえで、病理組織、進行のスピードによる分類のほかに、臨床病期、年齢、全身状態、リンパ節以外の病変、血清LDHの値等の血液検査の値が重要とされています。
1)びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫における治療選択
非ホジキンリンパ腫の中で最も多いタイプとされるびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫では、国際予後因子(International Prognostic Index:IPI)を用いることで、標準治療による治りやすさを予測することができます。
国際予後因子に含まれるもの
- 年齢
- 病期
- 日常の活動性 (Performance Status:PS)
- リンパ節以外の病変の数
- LDH
(1)年齢
患者さんの年齢が60歳以下であるか、それより上であるかによって予後が変わってきます。60歳を超えた場合に、リスクファクター(危険因子)1点を加えます。
(2)臨床病期
病気の進行状態が進んでいるほど予後に悪い影響を与えるのは、他のがんと同じです。臨床病期がIII以上でリスクファクター1点を加えます。
図2 臨床病期
(3)日常の活動性(Performance Status:PS)
リンパ腫と診断されたとき、日常活動を行う能力をどれくらい持っているかを表す指標です。PS2以上でリスクファクター1点を加えます。
0: | 発病前と同じ状態 |
1: | 軽度の症状がある。肉体労働に制限がある。 |
2: | 日中の50%以上は起きている。軽労働に制限がある。 |
3: | 日中の50%以上は床に就いている。身の回りのことをするのに制限がある。 |
4: | 終日、床に就いている。身の回りのこともできない。常に介助が必要。 |
(4)リンパ節以外の病変
病気がリンパ節およびその関連臓器に限られているか、あるいはそれを越えて広がっているかによって、予後が異なります。リンパ節以外にある病気のかたまりを「節外病変」といいます。例えば、もともとリンパ節が少ない骨髄、消化管、皮膚、甲状腺、肝臓、中枢神経、肺、泌尿(ひにょう)生殖器、骨等にリンパ腫が発生した場合は節外病変といいますが、脾臓や扁桃を含む咽頭(いんとう:のど)の組織 (ワルダイエル環(かん)といいます)はリンパ節と同等と見なされますので、節外病変とはいいません。節外病変が2ヵ所以上ある場合には、リスクファクター1点を加えます。
(5)LDH(乳酸脱水素酵素):正常か異常高値か?
血清LDHの値は、病気の勢いや腫瘍の大きさと相関すると考えられています。LDHが上昇しているときには、リスクファクター1点を加えます。
以上の項目をまとめますと、表2のようになります。表2にあてはまる項目の数で、表2-1によって判定します。
表2 国際予後因子(全年齢)(International Prognostic Index:IPI) | 表2-1 | ||
Factors Project. N Engl J Med 329:987-994, 1993 |
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標準治療を行った場合の生存曲線は図3のようになり、高危険群の方では、治療をしても5年生存率が25%弱です。現在は坑CD20モノクローナル抗体などの新しい薬剤の併用により、全体的に生存率は向上していると考えられます。それでも、標準治療だけでは治癒を期待することが難しいとなると、新しい分子標的薬剤の導入や自家造血幹細胞移植を治療に組み込むことで、生存率の向上を目指すことができます。
図3 国際予後因子によるグループ分けをしたときの侵襲性
(aggressive)非ホジキンリンパ腫の予後
(aggressive)非ホジキンリンパ腫の予後
出典:N Engl J Med 329: 987-994, 1993(著者ら改変)
また濾胞性リンパ腫に対しては、同じように下記の5項目を点数化した濾胞性リンパ腫国際予後因子(Follicular Lymphoma International Prognostic Index:FLIPI)を用いるようになってきました。IPIとの違いは、PSの代わりにヘモグロビン値を用いる点と、節外病変の代わりにリンパ節の病変の数を用いる点です。
表3 濾胞性リンパ腫国際予後因子 (FLIPI) | 表3-1 | ||
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関連情報
悪性リンパ腫の一般的な知識 悪性リンパ腫の標準治療 再発・治療抵抗性悪性リンパ腫の治療
独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センターに掲載されている情報を転載しています。