2011/09/24

冷凍保存した精子は夫の生存中に限り、使用できる

がんは現代医学では不治の病ではないと言われても、その人の年齢や体力、精神力、がんのステージや進行度などにより、どうなるかはわかりません。また、外科的手術などにより体内からがん細胞がなくなったとしても、元の生活にもどれる保証もありません。

大切な人ががんと診断されたとき、"不治の病ではないから大丈夫"と安心できる人がいるでしょうか?

パートナーや夫婦ががん患者の場合、回復を望むばかりで他のことを考える余裕がないかもしれません。しかし、将来的に子供を望んでいるとしたら、知っておかなければならないことがあります。

それは、生殖機能についてです。

抗がん剤による性機能障害のため、精子を冷凍しておこうと考える方はたくさんいると思います。近い将来、パートナーが完全完解し、子供も持てると期待して。そこで、精子の凍結に関する重要なガイドラインをご紹介します。


精子の凍結保存に関する見解

ヒト精子の凍結保存(以下本法)は人工授精ならびに体外受精などの不妊治療に広く臨床応用されている。

一方、悪性腫瘍に対しては、外科的療法、化学療法、放射線療法などの治療法が進歩し、その成績が向上してきたものの、これらの医学的介入により造精機能の低下が起こりうることも明らかになりつつある。そのため、かかる治療を受ける者が将来の挙児の可能性を確保する方法として、受療者本人の意思に基づき、治療開始前に精子を凍結し保存することは、これを実施可能とする。

なお、本法の実施にあたっては以下の点に留意して行う。


  1. 精子の凍結保存を希望する者が成人の場合には、本人の同意に基づいて実施する。精子の凍結保存を希望する者が未成年者の場合には、本人および親権者の同意を得て、精子の凍結保存を実施することができ、成人に達した時点で、本人の凍結保存継続の意思を確認する。
  2. 凍結保存精子を使用する場合には、その時点で本人の生存および意思を確認する。
  3. 凍結精子は、本人から廃棄の意思が表明されるか、あるいは本人が死亡した場合、廃棄される。
  4. 凍結保存精子の売買は認めない。
  5. 本法の実施にあたっては、精子凍結保存の方法ならびに成績、凍結保存精子の保存期間と廃棄、凍結した精子を用いた生殖補助医療に関して予想される成績と副作用などについて、文書を用いて説明し、了解を得た上で同意を取得し、同意文書を保管する。
  6. 医学的介入により造精機能低下の可能性がある場合は、罹患疾患の治療と造精機能の低下との関連、罹患疾患の治癒率についても文書を用いて説明する。


平成19年4月
社団法人 日本産科婦人科学会



日本のほとんどの産婦人科医が(社)日産婦の会員となっているため、考えたくはないけれど、もしものことがあった場合、"それでも最愛の人の子供を産みたい"という願いを叶えることはできないようです。